動物病院の予約・受付
予約はカルテにつなぐ。ネットの枠は、小さく始める。
午前の診察中に、受付の電話が何度も鳴る。保定を代わってもらって予約を受け、戻ると次の飼い主さまが待っている。ネット予約を考え始める病院の多くは、こうした場面から話が始まります。
予約システム選びで差が出るのは、予約画面の見た目よりも次の2点です。ネットで入った予約が、飼い主さま・ペットの情報(顧客管理)と同じシステムに入るか。そして、ネットに出す予約枠をどこまで絞って始めるか。前者は受付の二重入力を、後者は導入直後の待合の混乱を左右します。電子カルテ全体の比べ方は「動物病院の電子カルテの選び方」にまとめているので、ここでは予約に絞ります。
電話予約を受けているのは、診察中のスタッフ
農林水産省の統計では、小動物(犬猫など)・その他の診療施設13,046か所のうち、獣医師1人の施設が8,067か所、2人の施設が2,636か所で、合わせて約8割を占めます(農林水産省「飼育動物診療施設の開設届出状況」令和7年)。多くの病院で電話を取っているのは、診察や処置に入っている受付・動物看護師、ときには獣医師本人です。
一度、自院の電話を数えてみてください。仮に予約・変更・キャンセルの電話が1日20本、1本2分なら1日40分、月25日診療なら月に約17時間です。しかも電話は、保定中や会計中といった手の離せないときにも鳴ります。かかる時間そのものより、作業が途切れるほうがこたえるかもしれません。
仕事中は電話をかけにくい飼い主さまでも、夜や休日に予約を入れておける窓口があれば、「電話がつながらないから別の病院に」という取りこぼしを減らせます。
予約システムは2種類
動物病院で使われる予約の仕組みは、電子カルテの機能として予約を受けるものと、電子カルテとは別の予約サービスに分けられます。
※表が画面に収まらない場合は、横にスクロールできます。
| 比較項目 | 電子カルテ一体型 | 単体の予約サービス |
|---|---|---|
| 予約の入り先 | 電子カルテの予約表に直接入る | 予約サービスの管理画面に入る |
| 飼い主さま・ペットの情報 | カルテと同じシステムで管理する | 予約サービス側にもう一つ名簿ができる |
| 受付での作業 | 来院時に予約からそのままカルテを開ける | カルテ側で飼い主さまを探す・登録し直す作業が出やすい |
| 始めやすさ | 電子カルテの導入・乗り換えと一緒に検討する | 今の電子カルテや紙カルテのまま始められる |
| 向いている病院 | 電子カルテの導入や見直しを考えている | カルテはしばらく替えず、まず電話を減らしたい |
単体の予約サービスには、業種を問わない汎用の予約サービスや、LINE公式アカウントから予約を受ける仕組みなどがあります。
予約と顧客管理が別々だと起きること
単体の予約サービスで考えておきたいのは、飼い主さまの名簿が二つになることです。
ネットで予約が入ると、受付は電子カルテ(または紙カルテ)で同じ飼い主さまを探し、その日の受付をします。初めての方なら、予約サービスに入力された氏名・電話番号・ペットの名前をカルテにもう一度打ち込みます。1件1〜2分でも、ネット予約が1日10件あれば毎日10〜20分の転記です。
転記の時間より厄介なのが、名簿のずれです。飼い主さまが予約のときに愛称やひらがなで登録したり、電話番号を変えたりすると、同じ方が別人として二つの台帳に残ります。来院履歴や次のワクチンの案内といった顧客管理はカルテ側にあるので、予約側の名簿がずれていても気づきにくいのです。
単体サービスを選ぶ場合は、契約前に次の点を聞いておきます。
- 予約データを電子カルテに取り込む方法があるか(ファイルでの出力や連携の有無)
- 再診の飼い主さまを、診察券番号などでカルテの情報と突き合わせられるか
- 飼い主さまの個人情報が予約サービス側にどこまで保存され、解約したときにどう扱われるか
選ぶ前に確かめたいこと
料金のかかり方(月額の定額か、予約件数などで変わるか)は資料の段階で聞くとして、デモで試すのは次の2点です。
予約メニューを、内容ごとに分けられるか
ネット予約の画面で飼い主さまが最初に選ぶのは「何の予約か」です。院内では「混合ワクチン」「FT」のような略称で呼んでいても、飼い主さまに伝わるのは「ワクチン接種」「フィラリア予防のお薬」といった言葉です。メニュー名はその言葉で付け、内容ごとに所要時間を分けられるかをデモで確かめます。
5分で済む薬の受け取りと20分かかる再診を同じ長さの枠で受けると、枠が余ったり足りなくなったりして、予約表と実際の診察の進み方がずれていきます。
キャンセル・変更をどこまで飼い主さまに任せるか
ネット予約なら、飼い主さまが自分で変更やキャンセルをできます。どこまで任せるかは病院が決めることです。変更・キャンセルをいつまで受け付けるか(前日の診療終了まで、など)を院内で決め、デモではキャンセルされた予約が予約表に記録として残るかを見ます。
始め方:予約枠は「全部ネットに出さない」ところから
導入で迷うのは、システムの設定よりも予約枠の設計です。次の順に決めていくと、院内で話がまとまりやすくなります。
1. ネットで受ける予約の種類を絞る
最初から全部をネットに出す必要はありません。ワクチン、フィラリアやノミ・マダニの予防、再診、薬・フードの受け取りのように、所要時間が読みやすく事前に聞くことが少ない予約から始めると、受付の段取りが崩れにくくなります。初診や急な体調不良、手術の相談は、症状を聞いて緊急度を判断したいので、当面は電話で受けるのが無理のない線です。
2. 枠の長さと数を決める
獣医師2人、午前9〜12時・午後4〜7時の病院で試算してみます。1枠15分なら、獣医師1人あたり1日24枠、2人で48枠です。このうちネットに出すのを半分の24枠にして、残りを電話予約と、予約なしで来院される方・急患のために空けておく、という分け方が考えられます。
最初は少なめに出し、1〜2か月の埋まり方を見て増やすほうが調整しやすくなります。いきなり全枠を開くと急患を入れる余地がなくなり、予約外の飼い主さまを長く待たせる日が出てきます。
季節による波も枠に織り込みます。犬の狂犬病予防注射は毎年4月から6月が期間で、フィラリア予防の始まりとも重なります。この時期だけワクチン・予防の枠を増やし、夏以降に戻す、という調整を前提にしておくと、春の電話の山を予約に逃がせます。
3. 当日予約をどう扱うか決める
当日のネット予約を受けるかどうかは、病院の方針で分かれます。受ければ「今日診てほしい」という電話は減ります。その代わり、診察中に予定外の予約が入るので、「開始の2時間前まで」のように締め切りを設けると、受付が準備できる時間を確保できます。
4. 飼い主さまへの案内と、電話との併用
始めたことが伝わらなければ電話は減りません。院内の掲示、診察券や明細書への案内、会計時の一言で知らせます。しばらくは電話とネットの予約が並ぶので、電話で受けた予約もネットと同じ予約表に入れることを院内で徹底します。紙の予約帳とシステムが並ぶと、同じ枠に予約が二重に入ります。
ミニイクの場合
ミニイクでは、予約も電子カルテと同じシステムの中で管理します。予約カレンダーでは担当獣医師ごとの予約を月・週・日の表示で確かめられ、受付のときに予約とカルテが自動で紐づきます。飼い主さま・ペットの情報や来院履歴は、予約と同じシステムで一元管理します。
飼い主さまは24時間ネットから予約でき、電話がかかってきたときは飼い主さま・ペットの情報を画面に表示する連携もあります(一部はオプションで、料金はご利用内容により異なります)。無料の体験版では、予約から受付、カルテまでの流れを実際の画面で試せます。
よくある質問
Q. 電話予約はなくしたほうがよいですか?
なくす必要はありません。初診や急な体調の変化は、電話で様子を聞いて判断したい予約です。目指すのは電話をゼロにすることではなく、ワクチンや再診のように聞くことが決まっている予約をネットに移し、電話を「話を聞く必要がある予約」に絞ることです。
Q. 年配の飼い主さまはネット予約を使えないのでは?
全員に使ってもらう必要はありません。電話や窓口での予約を残したまま、使える方から移ってもらうだけでも電話は減ります。ご家族が代わりにスマートフォンから予約することもあるので、診察券や明細書に予約の案内を載せておくと、ご本人以外にも届きます。
Q. 予約システムだけ先に入れて、電子カルテは後から替えてもよいですか?
できます。ただ、あとで電子カルテを替えるときに予約の仕組みも替わると、飼い主さまに予約方法を二度案内することになります。1〜2年のうちに電子カルテの見直しを考えているなら、予約機能を持つ電子カルテと単体の予約サービスを並べて比べてから決めると、二度手間を避けられます。開業準備中の方は「動物病院の開業ガイド」もあわせてご覧ください。
まとめ
体験版やデモでは、ネットから予約を1件入れて、受付でその飼い主さまのカルテを開くところまで操作してみてください。予約メニューを自院の言葉に書き換え、ネットに出す枠を半分にしてみると、導入後の運用がそのまま想像できます。

