動物病院の電子カルテの選び方|導入後に後悔しない7つのポイント

動物病院のシステム選び

機能の数より、いつもの診察がスムーズに進むか。

電子カルテの資料を何社分か並べても、機能一覧はどれもよく似ています。予約、カルテ、処方、会計、顧客管理。⚪︎の数で比べても違いが見えないまま、デモの日程だけが決まっていく、という声をよく聞きます。

資料やデモで確かめたいのは機能の有無ではなく、自院のいつもの診察を受付から明細書まで通したときに、手が止まらないかです。導入後の「こんなはずでは」は、機能一覧の⚪︎と×ではなく、毎日の運用の中で起きます。動物病院向け電子カルテ「ミニイク」が紙カルテからの切り替えや他社カルテからの乗り換えをお手伝いしてきた経験から、確かめておきたい点と、体験版で試すときのチェックリストをまとめました。

時間はないのに、やり直しが利きにくい

農林水産省の統計では、小動物(犬猫など)・その他の診療施設は全国に13,046か所あり、そのうち8,067か所(約62%)は獣医師1人の施設です。獣医師2人までを合わせると約82%になります(農林水産省「飼育動物診療施設の開設届出状況」令和7年)。

多くの病院では、院長が診療の合間にシステム選びまで担っています。一方で、電子カルテにはカルテ、飼い主さまとペットの情報、会計の履歴が積み上がっていくので、一度入れると簡単には替えられません。比べる時間は少ないのに、やり直しは利きにくい。だからこそ、見るところを絞る必要があります。

比較の前に、院内で決めておくこと

製品を見る前に、いちばん改善したいことを一つ決めておくと、デモで見る場所が絞れます。「カルテを探す時間」「会計の待ち時間」「電話予約の多さ」「分院とのカルテ共有」などを全部同じ重さで比べると、機能の多い製品が良く見えてしまいます。

デモには受付と動物看護師にも入ってもらってください。電子カルテを一番長く触るのは、たいてい院長ではありません。受付は飼い主さまの前で画面を操作するので、待たせる時間や、他の飼い主さまの情報が画面に出ないかも見ておきます。

方式も決めておきます。院内にサーバーを置く院内サーバー型(オンプレミス型)と、インターネット経由で使うクラウド型があり、クラウド型なら院外や分院からもカルテを見られ、サーバーの故障対応や更新も提供会社が受け持ちます。その代わり、回線が止まると使えません。クラウド型を検討するなら「インターネットがつながらない間、受付と会計をどう回し、復旧後にどう入力し直すのか」を院内で決めておけるよう、製品ごとに聞いてください。

電子カルテ選びで確かめたい7つのポイント

1. いつもの診察が、手を止めずに通るか

機能一覧ではどの製品も「対応」と書かれていても、画面の流れ、入力の手数、明細書の見え方は製品ごとに違います。ここは資料では分からないので、実際に操作して確かめるしかありません。

おすすめは、自院でいちばん多い診察を3つ選び、受付から明細書まで通してみることです。たとえば「混合ワクチンの接種と証明書の発行」「皮膚炎の再診で前回と同じ薬を出す」「血液検査をして結果を飼い主さまに渡す」。実在の飼い主さまのお名前は使わず、いつもの診察・処方、取り扱いの多いペット保険の組み合わせで再現します。

試すときは、操作に迷った場所と、紙やメモに頼りたくなった場所を書き留めておきます。毎日の会計で積み重なるのは、こうした数十秒の手間です。3つの診察を2〜3社で比べると、資料では同じに見えた製品の違いがはっきりします。

2. データ移行の範囲と方法

紙カルテや他社の電子カルテから乗り換える場合、データ移行は契約が済んでから細かい話を詰めることの多い項目です。

飼い主さまの氏名や連絡先、ペットの名前や生年月日といった基本情報は、表形式のデータになっていれば比較的移しやすい部分です。過去の診療記録はシステムごとにデータ形式が違うため、同じ形のまま移せるとは限らず、参照用の記録として取り込むなど、移し方を相談して決めることになります。

移行で特に気をつけたいのは日付です。生年月日が「2018年頃」「2018年4月」のように年や月までしか記録されていないと、年月日の形でしか入らない欄に取り込むときに、空欄になったり正確そうな別の日付に置き換わったりすることがあります。取り込む前に日付の形式をどう確かめるかも、提供会社に聞いておきます。

契約前に確認したいのは次の点です。

  1. 移行元のシステムから、どの形式でデータを出力できるか(出力に費用がかかるか)
  2. 何年分の、どの情報を移すか
  3. 今のカルテ番号(診察券番号)をそのまま使えるか
  4. 切り替え日より先に入っている予約や、ワクチン・狂犬病予防の次回案内の対象をどう引き継ぐか
  5. 移行にかかる費用と期間
  6. 移行後に、件数や中身が正しいかをどう確かめるか

カルテ番号が変わると、診察券の作り直しと「番号で探す」習慣の作り直しが受付で一斉に起きます。次回案内の対象が移らなければ、案内はがきの送り漏れにつながります。

3. 予約から会計まで、一つの流れでつながるか

予約、受付、診察、処方、会計がつながっていれば、同じ情報を何度も入力する必要がなくなります。デモでは「予約が入ってから会計が終わるまで」を一通り操作して、どこで二度入力が発生するかを見てください。

電話を減らしたいなら、飼い主さまがネットから予約できるか、その予約が受付とカルテにそのまま入るかも確認します。

4. 検査機器や周辺機器と連携できるか

血液検査機器などの結果を手で書き写していると、時間がかかるうえに転記ミスも起こります。検査機器との連携は、対応表の上では同じに見えても、実際の動きに差が出ます。

「〇〇社の機器に対応」という一覧だけで判断せず、自院の機器のメーカー名と機種名を伝えて、次の3点を聞くと対応の深さが分かります。

  • 結果は自動で取り込まれるのか、紐付けの操作が必要なのか
  • 取り込んだ結果が、カルテのどこにどう表示されるのか
  • 検査機器連携時やトラブル時に訪問対応してもらえるのか

レジ・自動釣銭機、電話の着信表示、ペット保険の窓口精算など、ほかに使っている仕組みがあれば、それらとの連携も同じように確認します。

5. 導入後のサポートの中身

「サポートあり」はどの資料にも書いてあるので、中身を聞きます。問い合わせの手段と受付時間、画面を共有しながら操作を見てもらえるか、操作説明をスタッフ全員が受けられるか。夜間や休日に診療している病院は、受付時間が診療時間と重なっているかを必ず確認してください。

いちばん確実なのは、検討中に実際に質問を送ってみることです。返事の速さと中身が、導入後のサポートの目安になります。

6. 数字を自分で取り出せるか

月の売上、診療項目別や日別の件数、税理士に渡す会計データ。こうした数字を、院長が表計算ソフト用のファイルとして出せるかを確認します。電子カルテに記録が積み上がるほど、経営の判断材料として使えるかどうかの差が大きくなります。

将来その電子カルテをやめるときに、カルテや飼い主さまの情報、会計の履歴を出力してもらえるかも聞いておいてください。入るときに楽な製品が、出るときも楽とは限りません。

7. 費用は総額と効果で比べる

費用は、月額料金だけでなく次の項目を足した総額で見ます。月額料金は、5年使う前提なら60か月分を足して比べてください。

  • 初期費用(設定・操作説明など)
  • 月額料金と、オプション機能の料金
  • データ移行の費用
  • パソコンやタブレットなどの機器

国の「デジタル化・AI導入補助金」(旧IT導入補助金)の対象になる場合もあります。事務局に登録された支援事業者と一緒に申請する仕組みで、公募の時期や条件は年度ごとに変わります。事務局のポータルサイトで最新の情報を確認し、検討している製品が対象かどうかを提供会社に問い合わせてみてください。

体験版・デモで確かめるチェックリスト

  • 予約を入れてから会計が終わるまで、一通り操作できるか
  • 受付・動物看護師・獣医師が、それぞれ迷わず操作できるか
  • 自院でいちばん多い診察3つを、明細書まで出せるか
  • ワクチンの接種記録から証明書まで、紙に書き写さずに出せるか
  • 診察中に、過去のカルテや検査結果をすぐ探し出せるか
  • 診察しながら、音声やよく使う文例でカルテを書けるか
  • 月の売上や件数を、ファイルに出せるか
  • タブレットやノートパソコンなど、使う予定の端末で快適に動くか
  • 検討中に質問を送ったとき、どのくらいで返事が来るか

開業時と乗り換え時で、見るポイントは少し変わる

新しく開業する場合は、データ移行がない代わりに、予約の受け付け方や会計の流れを最初から電子カルテに合わせて設計できます。料金表や薬の登録、スタッフへの操作説明には意外と時間がかかるので、開業日から逆算して期間を確保します。

乗り換えの場合は、データ移行と、スタッフが慣れるまでの期間が山場です。繁忙期を避けて切り替え日を決め、切り替え直後の数日は予約枠に少し余裕を持たせると、混乱を減らせます。

ミニイクの場合

ミニイクはクラウド型の電子カルテで、インターネットにつながるパソコン(Windows・Mac)やiPadで使えます。予約・受付・カルテ・処方・会計・顧客管理から売上の集計までを一つのシステムで扱い、飼い主さまは24時間ネットから予約できます。

IDEXXや富士フイルムなどの主要な検査機器、自動精算機、電話の着信表示、アニコム・アイペットの窓口精算と連携しており、音声からカルテの下書きを作る「VetAsis for ミニイク」も利用できます(一部はオプションで、料金はご利用内容により異なります)。

紙カルテ・他社カルテからの移行に対応し、専任の担当者が操作説明から運用の定着までサポートします。初期費用は基本無料です(他社システムからのデータ移行は別途費用がかかります)。

無料の体験版では、実際の画面でいつもの診察を再現して試していただけます。

まとめ

候補を2〜3社に絞ったら、自院の診察3つを同じ手順で通し、毎日使うスタッフに「どこで手が止まったか」を聞いてみてください。比較表より、その答えのほうが選ぶ決め手になります。