はじめに
近年、ペットの飼育環境や飼育数の変化が動物病院の経営に大きな影響を与えています。特に、新型コロナウイルスの流行後にはペットブームが加速し、その後の動向が注目されています。
本記事では、日本国内のペット飼育数のトレンドと、それに伴う動物病院経営の未来を予測 し、動物病院が今後どのような戦略を取るべきかを考察します。
1. 日本国内のペット飼育数の推移
過去10年間のペット飼育数の動向
日本では、ペットの飼育数が増減を繰り返してきましたが、以下のような傾向が見られます。
- 2010年代前半:ペットブームが一段落し、犬の飼育数が減少傾向。
- 2019年~2021年:新型コロナウイルスの影響で在宅時間が増え、ペットを飼う家庭が急増。
- 2022年以降:コロナ禍が収束し、飼育数の伸びが鈍化。一部ではペットの手放し(飼育放棄)も増加。
現在のペット飼育数の特徴
最新の統計によると、
- 犬の飼育数:長期的に減少傾向(特に大型犬の人気が低下)。
- 猫の飼育数:安定もしくは微増(単身者や高齢者層に人気)。
- 小動物・爬虫類:新しいペットの選択肢として増加。
- エキゾチックアニマル:珍しいペット(フェレット、ハリネズミなど)の飼育が広がる。
2. ペット飼育数の変化が動物病院経営に与える影響
(1)来院数の変化
ペット飼育数の減少は、そのまま動物病院の来院数減少につながる可能性があります。特に、犬の飼育数が減っているため、従来の犬中心の診療スタイルでは経営が厳しくなる可能性があります。
(2)診療内容の変化
ペットの種類が多様化する中、動物病院の診療内容も変化が求められます。
- 猫専門の診療ニーズの増加:猫はストレスに弱く、犬と同じ診療スタイルでは難しいため、猫専用の診療スペースを用意する病院が増加。
- 小動物やエキゾチックアニマル診療のニーズ増:フェレット、鳥、爬虫類などの診療が可能な病院は今後有利になる。
- 予防医療の需要増:長寿化するペットが増え、慢性疾患や健康管理への意識が高まる。
(3)価格設定と収益モデルの変化
ペットの飼育数が減少すると、単純に患者数が減るため、収益モデルの見直しが必要になります。
- 診療単価の向上:高付加価値のサービス(高度医療、ペットドック)を提供し、単価を上げる。
- 会員制サービスの導入:定額制の健康管理プランを導入し、安定収益を確保。
- オンライン診療の活用:飼い主の利便性を高め、遠方の患者も対応可能にする。
3. 動物病院経営の未来予測と対策
短期(1〜3年後)
- ペット飼育数の鈍化が続くが、健康管理サービスの需要が高まる。
- 予防医療の需要が拡大し、ワクチン・健診の売上が伸びる。
- 猫専門・エキゾチックアニマル専門の病院が増加。
中期(3〜7年後)
- 獣医師不足が顕在化し、効率的な診療システムの構築が必要に。
- AIを活用した診断支援や、オンライン診療が一般化。
- 病院のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進み、電子カルテやデータ分析を活用する病院が生き残る。
長期(10年後〜)
- 少子高齢化が進む中、シニア世代向けのペット診療サービスが充実。
- ロボット技術やバイオテクノロジーの発展により、新たな治療法が確立。
- 動物病院の経営形態が多様化し、チェーン展開・グループ化が進む。
まとめ:動物病院が今後取るべき戦略
- 診療対象の拡大:猫やエキゾチックアニマルの診療を強化。
- 収益モデルの再構築:単価向上・会員制・オンライン診療の導入。
- DX推進:電子カルテ、データ活用、AI診断の導入。
- ペットオーナーとの関係強化:健康管理プログラムを提供し、長期的な関係を築く。
- 獣医師不足への対応:業務効率化やスタッフ育成に投資。
ペット飼育数の変化に伴い、動物病院経営も新たなステージに突入しています。今後の変化を見据えながら、柔軟に経営戦略を見直すことが成功の鍵となるでしょう。
ミニイク株式会社では、動物病院向けのDXソリューションを提供しています。経営のご相談や電子カルテの導入について、お気軽にお問い合わせください。